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【椿くんとかのこ猫 7】(椿かのこ 夢オチ)

夢オチシリーズの前の分は、サイトにあります。

かのこ視点で一人称。

◆◆◆
 夢だ。
 夢だということは、すぐにわかった。
 この夢は初めてじゃない。見るのは久しぶりだけど、前にも見たことがある。
 ……ここは椿家のリビングで、私は黒のワンピース。そして、頭には猫耳が……!
 と、触ってみたところ。
 あれ?
 なんか、手触りが前と違う。
 なんか、偽物っぽい。ぬいぐるみの感触。
 ……これ、猫耳カチューシャだ。偽物だ。
 尻尾は?
 と触ってみたところ、やっぱり偽物の手触りだった。
 これは……今回は猫じゃないってこと!?
 なら、当然、まずすることは……猫耳を外す!
 外れるんなら、当然こんなこっ恥ずかしいものとはおさらばだ……!
 と、思ったのだけれど。

 ……外れない。

 偽物のくせに……!
 私はあまりの悔しさに、崩れて膝を突いた。
 偽物なのに外れないって、どういう中途半端さなのか、説明を求めたい。
 ……もちろん、自分の夢なので、誰も説明などしてはくれないけれど。
 今回の命題は、この恥ずかしい格好は猫ではなくて人間のコスプレだけれど、外せない。それでも恥を忍んで出て行けるかということなんだろうか。
 猫耳つけて歩いてる人間がいたら、自分だったら思いっきり迂回しちゃうけどさ。
 ……桃ちゃんなら、きっと笑わない。
 後は、ここから桃ちゃんちまでの距離の問題か。
 少し考えて、答はすぐに出た。
 夢なんだから、気にすることなんかないじゃん。
 笑われたって、しょせん私の夢の中だ。
 よし、桃ちゃんちに行こう。
 そう思って、リビングのガラス戸に手をかけた。
「だから、外出るなよ」
 その手を、後ろから押さえられた。
 出たな! 椿君……!
 そう、この夢で外に出ようとすると必ず登場して邪魔をする、この夢での猫の飼い主。
 いや、でも、今日は違う。
 私は椿君を振り返った。
 今日は、猫じゃなくてコスプレだからね!
 コス……

 む、むちゃくちゃ恥ずかしい……!

 落ち着け、これは夢だ。
 本物の椿君に見られたわけじゃない。
「どうしたんだ、顔真っ赤だぜ?」
 顎をくいっと持ち上げられた。
 椿君はいつもこういう気障なコトするから、いつもと変わりないと言えば変わりないけれど。
 でもこれは……椿君もちゃんと人間扱いしてくるってことか。
「つ、椿君、外に出してよ!」
 恥ずかしさを誤魔化すように、叫んだ……あ、喋れる!
 何度もこの夢は見たけど、今まで「にゃー」としか言えなかったのに。
 初めて意思の疎通が図れるようになったのも、今回は人間だからか。
 でも。
「駄目だ」
 椿君の返答はにべもなかった。
「なんでよ」
「外に出たら、交通事故とか危ないだろ?」
「交通事故を恐れてたら、外歩けないじゃん」
「誘拐されるかもしれないし」
「ば……ばっかじゃなかろうか!」
 なんで椿君に、交通事故と誘拐を心配されないといけないんだ。
「外は危ないから、家の中で我慢しとけ」
 ほら、と抱き上げられて、ソファーまで連れて行かれる。
 また膝の上に乗せられて、座らされた。
「大丈夫だってば。危ない人についてったりしないよ。って、椿君、ホントにお母さんみたいな心配しないでったら」
 物知りおじさんが高校に入ったら心配性のお母さんに化けてたなんて、誰が想像するだろう。一瞬同い年の男の子っぽいとか思ったこともあったけど、椿君の変遷は謎すぎる。
「お母さんじゃなくて、飼い主だろ」
 ……え。
「飼い主?」
 椿君を、指さし確認。
「飼い主」
「……私、飼われてるの?」
 私を、指さし確認。
「飼い猫」
「猫じゃないよ!」
「猫だろ」
「猫は喋んないじゃん!」
「猫だっての」
 ああっ、夢だから?
 いつもよりわけのわかんないことになってる……!
「猫さらいが出るから、外は駄目だ。三味線にはなりたくないだろ?」
 三味線……は、ちょっとゾッとした。
 椿君には、会話が成り立っててもやっぱり猫なのか。夢にそこを追求しちゃ駄目か。
「じゃあ、桃ちゃんを連れてきてよ」
 そうだ。
 私が行けないのなら、連れてきてもらえばいい。
「花井?」
「そう。待ってるから、連れてきて」
「駄目だ」
「なんで!?」
「お前、花井が来たら、花井に着いてっちまうだろ」
 ああ、まあ、それは確かに。
 でも、いいじゃん。
 桃ちゃんに飼われても、いいんじゃないの?
 椿君じゃないといけない理由があるのかな。
「花井んとこには、杜若がいるだろ」
 杜若さん……
 杜若さんが、桃ちゃんに飼われてるの!?
「お前と杜若じゃ、合わねーよ」
 そりゃ合わないけど。
「俺にしとけ」
 椿君が頭を撫でて、そう言った。
 ……杜若さんと一緒に飼われたら、そりゃ合わないのはわかるけど……桃ちゃんには会いたいよ。
「着いて行かないから、桃ちゃんに会わせてよ」
 ねえねえ、と、椿君の袖を掴んで引いた。
 椿君は、ちょっと困った顔で、少しだけ黙って。
「……わかった、おとなしくしてたらな」
 椿君……!
 やっぱり椿君て優しいよね。
 ほっとしたら、なんだかちょっと眠くなった。
 椿君の膝の上で寝たら重そうだから、降りてソファの上に座り直して。
 ちょっとうとうとして、目を擦ったら、椿君に抱き上げられた。
「こんなところで寝るなよ。寝床行け」
 寝床……どこで寝てるんだっけ、と思ったところで意識が途切れて――
 目が覚めた。



「杜若さんに嫉妬する」
「なんだそりゃ」
「やっぱり同じ学校のアドバンテージってあるよね。私も、桃ちゃんと同じ学校だったら……!」
 杜若さんより、きっと私の方が桃ちゃんと仲良くしてるとは思うけど、やっぱり一緒にいられるって大きいよね。
 でも、椿君は顔を顰めて否定した。
「……同じ学校のアドバンテージなんて、それほど大きかねーよ」
「そうかな」
「大きくなんかねーよ。俺が保証してやる」
「椿君が?」
「そうだ。保証する」
 椿君……
 夢の中だけじゃなく、やっぱり優しい。
 私が杜若さんを羨むことはないってことを、言ってるんだよね。
「ありがとう、椿君」
「……おう。同じ学校のアドバンテージなんか、本当に僅かなもんだぜ」
  1. 2011/04/16(土) 00:06:14|
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