あばうとSS目次恋愛SS-N恋愛SS-R恋愛SS-S恋愛SS-×作品感想妄想悪戯描き雑談返信お知らせ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告|

【かけひき】(リクSS かのこ+矢吹)

リクエストSSです。
近々の連載分的ネタバレを含むので、コミックス5巻までに未収録分を避けたい方はご注意ください。

リクエストの内容に沿っているかは若干微妙かもしれませんが…
椿君は出てません。矢吹会長とかのこのみです。
どうしてそういうリクになったか、何が見たかったのかはピンときたのですが、真面目にリク内容を実現するには十分構想が必要だろうし、最低1万字を切ることは難しいんじゃないかと思うので、これでご容赦ください。

◆◆◆
「選挙違反だな」
 生徒会長戦に泡沫候補は多い。勝負になるであろう候補は限られていて、他は選挙戦のお飾りのようなものだ。だが記念受験な者ばかりでもなく、立候補したからにはと、なりふり構わず当選を目指す者もいる。
 なりふり構わずの中には、禁止されているようなことに手を染める者もいる。
 たとえば、有力者の買収など。
 各部の有力者を取り込むことができたら、その後輩たちの票を丸々……なんてことも夢ではない。
 手段を選ばぬというだけなら有力候補も似たようなものだが……あるいは一票を争う有力候補たちの方が手段の選ばなさは激しいかもしれないが、有力候補となる者たちはそれだけ注意深い。足を引っ張られるようなミスは犯さない。
「通報しておく」
 矢吹は表情も変えずに水上の持ってきた書類に目を通して言った。
 それは、かのこの持ち込んだものではない。矢吹はかのこと打ち合わせをしていたが、そこにひょっこりやってきた水上が、そっと手渡した書類だ。どこかの候補が選挙違反をしているという情報が、別の者からもたらされたのだろう。矢吹は現役の生徒会長なのだから、そういう情報も流れ込んでくるのはわかる。
 矢吹は自身が立候補者なので、選挙管理委員会には所属していない。通報すると言うのは、選挙管理委員会にだろう。
 かのこはそれを目前で聞いていて、少し考えた末に止めることにした。
「待ってください」
「なんだ?」
「通報するの、ちょっと待ってください」
「何故だ」
 弱みは握っておいた方がいい。と言って、さてこの男は納得するだろうかと、かのこは向かいに座っている矢吹の顔を見た。
 情報に利用価値があること自体は、矢吹も理解しているはずだ。小田部がそういう方法で力を持っているのだということはわかっているのだから。
 でもそれが多く手に入る立場にありながら、振り回すことはしない。ということは、それをすることをよしとしないということだろう。清廉潔白な生徒会長という立場を優先させる保身的なものからか、正義感からくる自律的なものなのか、そこは判断に迷うところだった。お堅いだけでもないということは、もうかのこにも見えている。
「やめさせるので任せてもらえませんか」
「やめれば、そこまでの罪は帳消しか?」
 冷ややかに問うのが正義感からだと言い切れないところが、難しい。
「断罪は選挙が終わってからでもいいでしょう。十分に反省するなら、処罰は必要ないということもあるし」
「君が人道的見地から内々にことを済ませようと言っているとは思えないが、お手並み拝見といこうか」
 矢吹は、微かに笑った。

 本当に違反しているなら、やめさせるのは簡単だ。知られていることをわからせれば、小心者はそこで処罰を恐れて手を引くだろう。今なら間に合うと赦免をちらつかせてやれば、完璧だ。
 しかし、今回は事後には矢吹が処罰に動くかもしれない。だから安易に赦免を取引に使うのは危険だった。
「何をした?」
 選挙違反が実を結ばなくなった知らせも、すぐに矢吹の元には入ったのだろう。
「今年は違反が多いから処罰の範囲が広くて、罰が厳しいってちょっと噂を流しただけですよ」
 主に買収される側を中心に。
 ついでに通報すれば内申が上がるかもというオマケもつけて。そんなことはありえないだろうに、騙された者は多くて通報者は増えたらしい。
 泡沫候補が受からないことなどわかっているのだから、巻き込まれたくないという保身の気持ちが働くのは、当たり前と言えば当たり前のことだ。
「当たり前の手だな」
「奇を衒う必要がありますか」
「ない」
 矢吹の表情は変わらない。
「だが、礼は言おう。今は、買う恨みは少ない方がいい――ありがとう」
 止めた理由もわかっていたのか、と、かのこは食えない生徒会長を白々と見つめた。
 選挙戦の最中に他の候補から恨みを買えば、見込みのない者ならば捨て身で邪魔をしてくる可能性だってある。選挙戦を考えれば、そんな恨みを進んで買うことはないのだ。
 わかっていたのかと思ったら、喉元まで出かかったが、どうにか「ばっかじゃなかろうか!」という言葉をかのこは呑み込んだ。
「――どういたしまして」
  1. 2013/01/16(水) 16:08:02|
  2. 恋愛SS-R|
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。