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【罪のない嘘】(富中四人組)

お誕生日おめでとう、かのこ!
でも小話はエイプリルフールです(笑)
そんなわけで、5/3のミニ本を公開。

続きを読むからどうぞ。
◆◆◆
「ホントにするの?」
「苗床が嫌ならやめとくぜ」
「私はいいけど」
 四月一日はエイプリルフール。嘘を吐いてもいい日ということになっている。だけど迂闊な嘘は人間関係を損なうので、注意が必要だ。特に人に心配させるような嘘、人を傷つけるような嘘は、地雷になる可能性を秘めている。ジョークで済ませられる範囲に、十分注意しなくてはならない。
 かと言っておめでたい嘘も万能ではない。幸せな嘘は嫉妬を呼ぶかもしれない。
 人に疎まれないで楽しませるコミカルな嘘というのは、高度な技能を要するのだ。
「高校の連中には近づかないで、富中のいつもの面子だけだし、こんな嘘を嫌がるヤツはいねーだろ」
 ちなみに嘘を吐くのは主に椿君だ。私はその付き合い。付属品ということだ。
「杜若さんあたりは悲鳴をあげそうだけど」
 桃ちゃん、夏草君、山田あたりは素直におめでとうって言いそうだ……確かに誰も傷付かない嘘か。
 さて、ここで、どんな嘘を吐くかを説明しないといけないか。
 まずは私を椿君の化粧テクでバケさせる。その次にかつらをかぶってヘアメイクする。宝校の制服をギャル風に着崩す。最後に、眼鏡を外す。以上で完成……本当に別人に見えるかどうかは、椿君の腕次第だ。
 そして別人に見える私を椿君が連れて歩き、富中のメンバーに彼女として紹介する。……これが、椿君の吐く嘘だ。
 私の嘘は、化粧で別人になりすますことか。
 そして、現在絶賛お化粧中というわけだ。椿君の腕は馬鹿にできるものじゃないが、でも果たして私を他人に見える顔にできるのか。
 そんなことを考えながら、椿君が塗りたくるままにさせておいた。
「よし、終わりだ。コンタクトは入れるか? 嫌なら俺の腕にしがみついてりゃコケないようにするけどな」
「絶対嫌だってわけじゃないけど、ワンディコンタクトは買いにいくの?」
「本人なしに買えないからな、買うならこの後で買いに行こうぜ」
 どうしようか、ちょっと迷う。コンタクトが絶対嫌で眼鏡ってわけじゃないけど、椿君に買ってもらうのもちょっとどうかと思う。
 とりあえず顔を確認しようと、眼鏡をかけた。
「あんまり変わらなくない?」
「眼鏡のせいだろ。顔に馴染んでるからな」
 そうか……と思って鏡を覗いているところに茶髪の長髪のかつらが頭に乗せられた。簡単に乗せられただけでも、印象が変わる。長さも色も違えば、そりゃそうか。
 ちなみに化粧品、かつらは椿君のお姉さんのものだ。最初、椿君はこのために服を買ってくれると言ったけれど、それは止めた。歳が変わるわけじゃないんだから、服は買わなくても制服の着方を変えれば十分だろう。
 そう言うわけで、かつらを固定してセットした後、普段よりもスカートはミニに、シャツは着崩した感じに、ブレザーじゃなくて緩めのセーターに。
 とりあえず完成。
 しかし完成スタイルを自分で見るためには、コンタクトを入れないといけない。眼鏡をかけてると、やっぱりどこか私に見える。
 少し迷ったけれど、別に椿君がいいなら自分で見なくてもいいやという結論に至った。
 コンタクト代がもったいない。
「コケないようにしてくれるなら、見えなくてもいいや」
「いいのか?」
「いいよ」
 危ないとこには行かないだろうし。
「……俺はいいけどな」
 そう言って、椿君は私の腰を抱いた。
「腕にしがみついとけよ」
 転ぶのは嫌だったから、椿君の言う通りにした。

「まずは夏草な」
 一番手は夏草君だ。騙しやすさで選んだらしい。
 夏草くんちの近くまで行って、携帯電話で近くの公園に呼び出す。公園で待つことにしたのは、私があまり歩かないで済むようにだろう。
「椿!」
 公園で待ってると、夏草君は走ってきた。
「よう、夏草」
 私と椿君はベンチに座っていた。私がよく見えないから、安全なように。眼鏡がないので、もちろん夏草君の顔もよくわかんないんだけど、脳天気そうな気配は夏草君のものだと思う。
「珍しいな、椿が急にうちまで来るなんて」
 椿君と話はしてるけど、夏草君は私の方を見てる気配を感じる。
「彼女が出来たから、紹介しとこうと思って」
 椿君が私を抱き寄せる。
「えっ!」
 夏草君の驚きの声が上がる。私と気付いているのか、いないのか……
「彼女? ……宝校の子だよな」
「ああ」
 これは気が付いてないな。恐るべし、椿君のメイクテク。
「可愛いだろ?」
 そう言いながら、椿君はかつらの頭にキスした。夏草君は赤くなってる。色の変化がよく見えない私にわかるくらいだから、真っ赤だろう。……椿君のはいつもと変わらないスキンシップだけど、普通は恥ずかしいもんかな。
 私も椿君のスキンシップに慣れて、感覚鈍ってるかも。
 ともあれ椿君の嘘の手助けに、ちょっと笑って見せた。
「名前は? なんて言うの?」
 あ、名前なんか考えてなかった。と思ったら、椿君がにこやかに答えた。
「かねこ」
 かねこって、かのこをもじったのか。名字なのか名前なのか。
「かねこさんっていうのか、可愛いな!」
 しかし夏草君はすっかり騙された様子だった。
 だけど、あんまりころっと騙される夏草君が夏草君らしすぎて……他の人なら、普段なに見てるのか、馬鹿じゃなかろうかとなるところだけど、夏草君は本当にらしすぎて、だんだん我慢出来なくなって噴いてしまった。
「え、なに!?」
 急に笑い出した私に、夏草君が慌てる。
「おまえ……」
「ごめん、椿君」
「え、あれ? 苗床の声……?」
「ごめん、夏草君」
 笑いながら、私はエイプリルフールのいたずらを夏草君に白状した。

 次に山田のところへ行ってまんまと騙して、やっぱりそこでネタバレまでした。
 でも杜若さんとこには椿君が彼女を連れて行くのも変だということで、三人目は桃ちゃんで、それが最後になった。
「椿君」
 夏草君と同じように、公園で桃ちゃんの登場を待つ。
「花井」
「……椿君、かのちゃんも一緒だったの?」
 そして、やっぱり走ってきた桃ちゃんは私を一目見て言った。
「!」
「桃ちゃん、私わかるの?」
「かのちゃん、今日はいつもと違うけど……わかるよ、もちろん」
 さすがは桃ちゃん……と思ってると、椿君が溜息を吐いた。
「……花井には勝てないのかよ」
 勝つってなにさ。
「かのちゃん、どうしたの? その格好」
「あー、エイプリルフールでね……」
 嘘吐きエイプリルフールのいたずらだと、桃ちゃんに訊かれて自分の格好の理由を告白する。
「嘘なんだ」
 なんか微妙な顔で桃ちゃんは椿君を見て、椿君は桃ちゃんを騙せなかったせいかやさぐれたように視線を逸らしている。
「そりゃもちろん嘘だよ」
 だから代わりに、私が答えた。
 椿君が隣で、なんだか深く溜息を吐いた。

  1. 2013/05/05(日) 03:53:22|
  2. 恋愛SS-N|
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