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【王様がいっぱい】(90000HIT企画)

90000HIT企画から
水上「実は君の方が女王様だな」

◆◆◆
「椿君は王様なので」
 私はさっき、転んで足を捻挫した。その事実自体に他者の関わりはなく、単に私の不注意による自過失の怪我である。
 現在地は生徒会室。ここに来た理由は、保健室より近かったからだ。誰もいなかったとしても、少し休めればよかった。――控え目な期待に反して、生徒会室には会議でもないのに自分以外の全員が揃っていた。
 椿君は「そういうときは電話しろよ!」と怒り、さゆり姫は普通に「大丈夫?」と聞いてきて、水上さんには「なにかあったの?」と胡散臭くにこにこ聞かれて、矢吹会長には黙ってじっと見られた。
 姫抱きにして保健室に運ぼうとした椿君を丁重に断わったところ、椿君はむっとして、やっぱり怒った顔で「ここにいろよ!」と言い捨てて生徒会室を出て行った。
 それに対して水上さんが「偉そうだねえ」と面白そうに言ったのへの私の返事が、冒頭のそれだ。
「王様かなあ?」
「王様ですよ」
 これについては、疑う余地はない。周りも椿君を絶対のカリスマとして扱っていて、椿君もそう振る舞ってきた。水上さんが一癖どころか二癖か三癖ほど隠し持っている人で、椿君のカリスマに惑わされないから、疑問符をつけられるだけだ。
 そういう意味では、この生徒会メンバーは椿君を特別扱いしない人が揃っていて、気が付けば椿君にとっては良い環境が生まれている。
 私を引き込んだ謎は残っているけれど、ここは椿君が今まで望んで得られなかった場所だ。それに気が付いて、不意に納得できた。
 ここでは、椿君は王様ではない。
 ここは椿君にとっては良い場所なのだと、そう思っているうちに、椿君が戻ってきた。
「足出せ」
 腕いっぱいにいろんなものを抱えて戻ってきた椿君は、座っていた私の前に跪いた。
 その姿は王様というよりも騎士のようで、この写真撮ったら結構良い値が付くんじゃないかな、なんて思っているうちに、椿君に捻挫した足を取られた。
 無造作なようで注意深く、私の足が痛まないように靴下まで脱がす。
 そして腫れ始めた足首に、冷却剤を吹き付けた。
 椿君はてきぱきと湿布を貼り、テーピングで固定し、その上から包帯を巻いて、ほぼ完璧な手当てをした。
 そして言った。
「医者行くぞ」
「……もう、必要なくない?」
 この治療は完璧だ。捻挫ってのは急性期は冷やすしかなく、また固定して動かなくしておくしかない。後は安静にするだけだ。
 だから、医者がやっても椿君と同じ処置になるんじゃないかと思う。
「骨が大丈夫か診てもらわないと駄目だ」
「大丈夫だって」
 椿君のいつもの心配性が出て、うざ……と目を逸らしたときだった。
 水上さんの笑う気配がした。
「実は君の方が女王様だな」
 ……なんでさ。
 でも軽く見回せば、その場では水上さんの言葉に異論のありそうな気配はなかった。

 ……全員が全員王様気質だと、椿君が特別にならないのはいいけれど。
 椿君が心配性すぎて、相対的に自分が上がるのか……ということに気が付いたとき、自分に持たされたQUEENのカードに、とてもうんざりとした。
  1. 2013/08/04(日) 20:52:30|
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