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【Cleansing】(椿かのこ)

6/10発売LaLaDX7月号の話なので、ネタバレ注意です。
つかネタバレものはいつもそうですが、解説的なところをまったく飛ばした不親切な造りの話なので、読んでないとわかりません。

小ネタ程度の長さです。
自分的萌えはありますが、オチは特にない話。
かのこ視点で一人称。

では「続きを読む」からどうぞ。
◆◆◆
「とりあえず会場戻る?」
「いや、もう終わってるだろ」
 縦移動の合流を果たした後、このまま会場に戻るかと訊いたら椿君は断固という顔で首を振った。
 ……舞台に上がるの嫌だったんだもんね。これはしようがない。
「結果なんか決まってるか」
「気になるんだったら、その辺にいる奴捕まえて訊けばいいんじゃねーの」
 と言うが速いか、椿君は通りかかった女子を呼び止めた。
「ミスコンどうなったか知ってるか?」
「あ! はい!」
 相手は二年なような気がするけれど、椿君にいきなり呼び止められて緊張した顔で直立不動になる。
 いつもこんなだから、普通に話してた姫乃さゆりと仲良いのかと思ったけど……いやまだ仲悪いって決まったわけでもないのか。所属が異なるだけで、性格が悪いのはお互い様だしね。
「女子は姫乃さんで、男子は再戦になりました」
「は?」
 椿君が顔を歪めて聞き返している。
 私もびっくりした。再戦って……椿君が棄権したからか。観客を丸め込めなかったのか、城蘭聖。
 でも、文化祭でもないタイミングでミスター宝高なんてお祭りを矢吹会長が許可するのか? また荒れそうな。
「再戦……」
「じゃ、じゃあ私はこれで」
 呼び止められた女子は礼をして、去っていった。
「椿君」
「……気にすんなよ。とりあえず結果はわかったんだ、会場に戻る必要はないな。ひとまず部室に行こう」
 この時はなんで部室に行くのかわからなかったけど、理由がありそうだったから椿君についていった。
「でも、部室鍵かかってんじゃない?」
「部長が戻ってなけりゃかかってるな」
「入れないじゃん」
「いれば入れる。お前も荷物は部室に置いてるだろ?」
「うん、ミスコンの女子控室に置くのは怖かったし」
「携帯もその中だよな」
「あ、そっか」
 私は自分の衣装を見下ろした。シンプルなワンピースにポケットはない。
「俺も衣装だから持ってねーし。夏草たちが合流しようと思ったら、電話かけてくるんじゃねーか?」
「あー、具合悪いって舞台上で言ったんだっけ。じゃ、今頃きっと桃ちゃんがかけてる」
「だろうな」
 それで部室にいったん戻ったものの、やっぱり部長は戻っていなくて、部室には鍵がかかっていた。
「どうしよう、控室に戻って先に着替えようか」
「…………」
 椿君が考え込んでいる。
 そんなに悩むことかな。その目立つ格好から着替えたい気持ちは、椿君の方が強いと思うのに。
 みんな心配してるだろうから、早く安心させたいのか。やっぱり友情に厚い男なんだな……椿君。
「いや、やっぱり先に部長を捜そう」
「わかった」
 何故か外された眼鏡を、椿君が私にかけ直した。
 ……自分でその顔で見るなと言いつつ、やっぱりじっと見てるんだよなあ。怖いもの見たさってやつなのか……
「苗床はどっかに隠れて……」
 言いかけて、椿君はまた考え込んだ。
 これはやっぱり私が笑い者にならないためか。過保護だとは思うけど、私のことを考えてくれてるんだよね。
「いや俺の後ろに隠れとけ」
 ……でも、一人で置いとくと勝手にうろつくと思ってるな、これは。連れて歩く方を選んだか。
「わかった」
 過保護だとは思うけど、一人にしたら私が勝手にうろつくと考えるのは仕方がない。今まで勝手にうろついてきたからね。

 取材している部長を捕まえるのは、そんなに苦ではなかった。その時間に旬の催し物をあたれば一発だったからだ。
 私は言う通り、背の高い椿君の後ろに隠れて、こそこそついていった。椿君が目立つから、いつもは私が悪目立ちするけど、今日はコスプレ椿君の注目度が高すぎるせいか比較的空気な感じで移動できた。
 部長から鍵をもらって、また部室にとんぼ返りする。
「やっぱり」
 携帯電話を確認すると、不在着信が大量に入ってる。
 隣では、さっさと椿君が夏草君にかけていた。
「夏草? 今、部室にいる。苗床も一緒。大丈夫だ」
 それを横目で見ながら、私も桃ちゃんにかけた。
「桃ちゃん?」
 電話の向こうで泣きそうな桃ちゃんの声がする。
「大丈夫、ちょっと休んでただけ」
 閉じ込められてた……は、言うことじゃない気がしたから、アナウンスの通りに休んでたことにした。
 椿君の方を見ながら話をしてたら、椿君も私の方を見た。
「夏草、そこに杜若いるか?」
 ……杜若さん?
「いたら替わって」
 なんで杜若さんに特別に話?
「杜若? クレンジング持ってるか? 携帯用の? それでいい。化粧落としたいから貸してくんね?」
 椿君もメイクしてるのか……と思ったけど、見た感じメイクはしてない。
 ああ、そうか。
 私のか。
 控室に先に戻らなかったのは、そこでとか、私が一人になった時に笑い者になるのを防ぐためか……
 本当にとことん気を遣ってくれるなあ。

 四人が部室まで来ると、椿君は最初は四人とも中には入れず、廊下で杜若さんからクレンジングと化粧水を受け取ってきた。
「お前、自分で化粧落とせねーよな」
「やったことない」
「落としてやるから、じっとしてろ」
 椿君にお化粧テクがあるのは、中学の時にわかってる。お姉さんのお化粧を見て憶えたという話だ。
 椿君が勉強しなくても頭がいいのは、記憶力がいいからだ。お化粧も勉強も同じなんだろう、見ていれば頭に入るんだ。
「……もう少し見てたかったけど、他の奴に見られるわけにいかないしな」
 ……人の顔、面白がってるな。
 でも他の人に笑われるようなことにはしないんだ。
 私は椿君の友情を噛み締めながら、眼鏡を外して目を閉じた。
  1. 2011/06/11(土) 11:03:54|
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